葬儀関係費とは,葬儀やその後の法要・供養等を執り行うために要する費用,仏壇・仏具購入費,墓碑建立費等のことをいいます。
交通事故、それも死亡事故となると葬儀費用は当然かかってきます。
この葬儀費用をどの程度請求できるかについてですが、自賠責保険基準では,原則60万円で,必要であり、かつ、相当な出費であれば100万円を上限に認められます。また、裁判所基準では原則150万円が上限となっていますが,現実の支出額が150万円を下回る場合には,実際の支出額の範囲内で賠償額が決めらます。
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交通事故のため何らかの後遺症が残ってしまった場合でも、収入に減額がないケースもあります。
このようなケースでは、逸失利益の賠償は一切認められないのでしょうか。
判例は、労働能力の喪失自体を損害ととられることを否定しているわけではありませんが、その後遺症が軽微であり、被害者の職業からみても現在も将来も収入の減収が見込まれない場合には、特段の事情のない限り、労働能力喪失を理由とする財産上の損害を認めることはできないとしています。
なお、特段の事情の典型例は、減収が生じていない理由が被害者本人の人一倍の努力のためであるといったケースです。
ただ、特段の事情が認められない場合でも、慰謝料額で調整してやや増額して示談するといったケースが多いです。
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好意同乗とは、その名のとおり好意により他人の運転する自動車に乗せてもらうことをいいます。
友人の車に乗せてもらって家まで送迎してもらっている最中に交通事故に遭った場合、加害者に対しては不法行為に基づく損害賠償請求等が可能です。
通常は、加害者の任意保険会社との間で示談交渉ということになりますが、保険会社が主張するのが「好意同乗」の理論です。
好意で車に乗せてもらっているのだから、全額の損害賠償請求なし得るのは道義的におかしい、などという理屈です。
しかし、好意同乗というだけで損害額が減額されると考えるのはいかにも不自然であり、裁判例も同様に解しているでしょう。
もっとも、好意同乗にとどまらず、同乗者が事故発生の危険を作出したり、事故の危険があることを認識しながらあえて同乗したような場合にはこの限りではありません。
典型的なのは、定員オーバーであることを知りながら乗車した場合や、一緒に飲酒した後に乗車したような場合です。
このような場合には、損害額が一定程度減額されます。
ご注意下さい。
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交通事故を契機に自殺(以下「自死」といいます)に発展するケースがあります。
交通事故により強い心的ストレスが加わった場合や、交通事故により容貌などに傷跡が残りこれを苦にして自死にいたる場合等、様々なケースがありえます。
このような場合、被害者の遺族は交通事故の加害者に対して死亡についての損害賠償を請求できるのでしょうか。
従来の裁判例は、事故と自死との間に相当因果関係がないことを理由として、上記請求を棄却する傾向にありました。
しかし、近時は、事実的な因果関係があることを前提に、事故による傷害等の自死への寄与度を考慮して、割合的認定を行う裁判例が増えています。
寄与度の認定は裁判所の裁量による部分が大きく今後の判例の集積を待つことになります。
追突事故を起こしてしまった場合、ほとんどの事例で追突した自動車のドライバーに10割の責任が認められています。
車間距離が狭い、前方を注視していなかったという事例が殆どだからです。
このような追突事故を起こしてしまった場合、運悪くトラック等の荷台に積まれていた荷物を破損したとき、どの範囲まで責任を負うのでしょうか。
判例は、当該追突事故と相当因果関係のある損害を賠償すべしとの見解を採用してますが、積荷の破損も自己によって発生した損害であり、事故との間に相当因果関係がある損害に含まれますので、原則としてその賠償責任を負います。
ですので、事故を起こさないように注意することはもちろん、対物保険等に加入して万一の際に備えることも大切です。
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自分の自動車が盗まれ、盗んだ犯人が交通事故を起こした場合、その犯人が交通事故による法的責任を負うのは当然ですが、では、盗まれた車の所有者はどうでしょうか。
運行供用者として責任を負う余地があるのではないのか、という問題です。
まず、所有者に車の保管について過失がばい場合には、運行供用者責任を負うことはないと考えて良いでしょう。
では、逆に過失がある場合はどうでしょう。
判例の考えによれば、客観的にみて第三者がその沓間を運転することを認容していたとみられてもやむを得ない事情がある場合には、運行供用者責任を負う必要があります。
例えば、エンジンキーを差しっぱなしにして駐車場に放置していとか、そういった事情があれば運行供用者としての責任は免れられないでしょう。
2013.4.30
会社の車で従業員が自己を起こした場合
会社の車で従業員が交通事故を起こした場合、それが業務上のものであれば、会社は使用者責任(民法715条)だけでなく、自賠法による運行供用者責任を負うのが原則です。
しかし、従業員が休日に会社の車を無断で持ちだした場合はどうでしょうか。
結論としては、会社は自賠法による運行供用者責任を免れることができないのが原則です(使用者責任も免れることができないのが原則でしょう)。
会社にはやや酷な結論ではありますが、会社としては、車の管理を厳格にして対応する他ないでしょう。特にタクシー会社などではこの種の問題は多いですから、特段の注意が必要です。
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自動車事故を起こした場合、その法的責任を負うのは運転者です。
しかし、自賠法は運転者だけでなく、運行供用者にも責任を課しています。
この責任は、極めて厳格のもので無過失責任に近い運用がなされています。
運行供用者の定義については、「自己のために自動車を運行の用に供する者」とされていますが、判例はこの運行供用者の範囲を極めて広く解しています。
近時の判例も、子供が友人と飲食店へ行き、子供が寝込んでしまったため、友人が父親の車を運転して人身事故を起こした事案について、父親は運行供用者に当たると判断しています。以下、判旨を引用すると、「本件自動車は上告人の父親であるBの所有するものであるが,上告人は実家に戻っているときにはBの会社の手伝いなどのために本件自動車を運転することをBから認められていたこと,上告人は,親しい関係にあったAから誘われて,午後10時ころ,実家から本件自動車を運転して同人を迎えに行き,電車やバスの運行が終了する翌日午前0時ころにそれぞれの自宅から離れた名古屋市内のバーに到着したこと,上告人は,本件自動車のキーをバーのカウンターの上に置いて,Aと共にカウンター席で飲酒を始め,そのうちに泥酔して寝込んでしまったこと,Aは,午前4時ころ,上告人を起こして帰宅しようとしたが,上告人が目を覚まさないため,本件自動車に上告人を運び込み,上記キーを使用して自宅に向けて本件自動車を運転したこと(以下,このAによる本件自動車の運行を「本件運行」という。),以上の事実が明らかである。そして,上告人による上記運行がBの意思に反するものであったというような事情は何らうかがわれない。これらの事実によれば,上告人は,Bから本件自動車を運転することを認められていたところ,深夜,その実家から名古屋市内のバーまで本件自動車を運転したものであるから,その運行はBの容認するところであったと解することができ,また,上告人による上記運行の後,飲酒した上告人が友人等に本件自動車の運転をゆだねることも,その容認の範囲内にあったと見られてもやむを得ないというべきである。そして,上告人は,電車やバスが運行されていない時間帯に,本件自動車のキーをバーのカウンターの上に置いて泥酔したというのであるから,Aが帰宅するために,あるいは上告人を自宅に送り届けるために上記キーを使用して本件自動車を運転することについて,上告人の容認があったというべきである。そうすると,BはAと面識がなく,Aという人物の存在すら認識していなかったとしても,本件運行は,Bの容認の範囲内にあったと見られてもやむを得ないというべきであり,Bは,客観的外形的に見て,本件運行について,運行供用者に当たると解するのが相当である。」となっております。
今年のGWは真ん中に3日間の平日があるため、大型連休とならなかった方も多いと思われますが、行楽施設はどこも混雑していますね。
また、高速道路や幹線道路は連日渋滞が続いているみたいです。
先週の金曜日には、名神高速道路で大きな交通事故があり、20キロ近い渋滞となっていたそうです。
せっかくの連休も交通事故等のトラブルに巻き込まれてしまうと台無しになります。
みなさん、運転にはくれぐれも注意して下さい。
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父親が死亡してその息子2人が共同相続人となった場合、長男が父親と同居していたとき、父親らとは離れて暮らしていた次男は長男に対して明渡し請求又は賃料相場分の半分に当たる額の不当利得返還請求等をなし得るのでしょうか。
この点について判例は、共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認される、と判示していますので、遺産分割協議が終了するまでは前記のような請求はできないということになります。
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日本経済新聞から解雇規制についての記事がありますので、ご紹介します。
記事によると、政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は23日、成熟産業から成長産業への人材移動を後押しする雇用制度改革の骨格を決め、従業員の転職を支援する企業向け助成金の拡充などが柱となっているようです。
企業から要望が強かった解雇規制の緩和は民間議員が主張を取り下げ、6月に策定する成長戦略には盛り込まない方向になりました。
政府は離職する労働者の再就職を支援する事業主向けの「労働移動支援助成金」の対象を来年度にも中小企業から大企業に広げる意向で、離職前に職業訓練を実施した企業に上乗せするほか、雇う側の企業内訓練に助成する制度もつくる予定です。
職務や勤務地を絞った限定正社員制度の普及も促す模様で、賃金は従来の正社員より安いことが多いが、社会保険にも加入でき、子育てや介護と両立しやすい利点があり、多様な働き手の確保につながるものと思われます。
ただ、契約社員と異なり期限を定めずに雇用されるが、就業規則や労働契約で定めた職務がリストラなどで廃止されれば雇用契約は終わります。
限定正社員の普及策は規制改革会議や経済財政諮問会議でも検討し、厚生労働省は就業規則のひな型を作る方針です。
なお、解雇規制の緩和など痛みを伴う改革は成長戦略に入らない方向にまりました。
企業経営者ら競争力会議の民間議員は「過剰な規制を見直し、諸外国並みにすべきだ」と指摘し、労働契約法に「解雇自由」の原則を規定し、再就職支援金を支払えば解雇できる「事前型の金銭解決制度」を導入するよう求めており、産業界は正社員を解雇しにくいことが新規採用を通じた雇用拡大の阻害要因になっており、成長産業への労働移動も妨げていると主張しています。
しかし国会で野党などから批判を浴び、政府内でも「7月に参院選を控えて刺激的な話題は取り上げにくい」(内閣官房)との声が強まり、民間議員も尻すぼみになりました。
結局、この日の民間提言からは解雇の主張が落ちることとなりました。
解雇無効の判決が出た場合に、労働者に補償金を支払って雇用契約を終える選択肢をつくる「事後型の金銭解決」は、競争力会議などで議論が続いており、成長戦略に盛り込まれる可能性は残りますが、ただ助成金を中心とし痛みを伴う規制改革を回避することで「人材移動を促す」改革の効果は小さくなる可能性もあります。
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先日は、目の前で追突事故を見かけました。
少しタイミングがずれていれば、私も事故に巻き込まれたかもしれませんが、運良く巻き込まれずに済みました。
そもそも、大阪のドライバー(大阪に限るわけではありませんが)は車間距離をあけない人が多いですね。
幹線道路でも高速道路でも、とにかく車間距離が短いです。
そうすると、当然前の車がブレーキを踏んだときに、ブレーキランプを見落とす等して追突事故に発展するわけです。
渋滞しているときに、車間距離を詰めたくなる気持ちはよく理解できますが、やはり危険です。
私も注意しないといけないと再認識しました。
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相続欠格(そうぞくけっかく)とは、相続において特定の相続人につき民法891条に規定される不正な事由(相続欠格事由)が認められる場合に、その者の相続権を失わせる制度をいいます。
民法第891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
なお、民法891条1号は、「故意に被相続人……を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」は、相続人となることができない旨規定していますが、推定相続人が被相続人に対し暴行を加え、よって被相続人を死に至らしめたとして傷害致死の罪で刑に処せられた場合には、同号によって相続欠格とはならないとされ、判例も、傷害致死の場合には、相続欠格者に当たらないとしています(大判大11.9.25 家族法百選65事件〔初版〕)。
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2013.4.25
相続の放棄、遺留分の放棄、相続分の放棄
相続の放棄とは、はじめから相続人でなかったことにする制度で、積極財産も消極財産も全て承継されません。
遺留分の放棄とは、相続人に認められた遺留分を放棄することであり、相続放棄とは異なりますので、債務はそのまま承継されます。
相続分の放棄とは、相続による積極財産のうち自己の相続分に当たる部分を放棄するものであり、やはり債務は承継されます。
似たような概念ですが、内実は全く異なりますので、注意が必要です。
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相続人がいない場合、相続財産管理人が家庭裁判所から選任され(利害関係人等の請求による)ます。
相続財産管理人は、相続財産の調査をし、被相続人の債権者に弁済する等して財産を精算します。
その後、残った財産は国庫に帰属します。
相続財産管理人が債権者に対して弁済した後、まだ財産があるような場合で、家庭裁判所が,相当と認めるときは,被相続人と特別の縁故のあった者の請求によって,その者に,清算後残った相続財産の全部又は一部を与えることができます。
これを特別縁故者への財産分与といいます。
しかし、この手続は時間と手間を要します(相続財産管理人の選任から1年以上経過する場合が多い)。
そこで、有効な手段とされるのが、包括遺贈です。
包括遺贈を受けた受遺者は、相続人と同一の権利義務を有しますので、相続人不存在の場合には該当しません。
ただし、債務の承継も伴うので、注意が必要です。
他方、一部の財産について特定遺贈を選択することも可能ですが、このような場合には相続人不存在に該当し、相続人不存在の手続きが必要となってしまいます。
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相続人は,自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に単純若しくは限定の承認又は放棄をする必要がありますが(民法915条1項本文),相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが,相続財産が全くないと信じたためであり,かつ,このように信じるについて相当な理由がある場合には,民法915条1項所定の期間は,相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識したとき又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である(最高裁判所昭和59年4月27日第二小法廷判決・民集38巻6号698頁参照)とされています。
この点について、比較的最近の裁判例は、「未成年者である相続人の法定代理人(親権者母)が、被相続人である離婚した元夫の住宅ローン債務に係る同人の保証委託契約上の債務を連帯保証していた事案について、ローンに係る住宅は被相続人の両親も生活し、住宅ローン債務は離婚時の協議により被相続人又は被相続人の兄弟において処理することになっていたこと、被相続人死亡後の残債務は被相続人が加入していた団体生命保険によって完済されていると考えていたことなどの事情の下においては、債務者から主債務者の相続人に向けた照会文書を同法定代理人が受領するまで、同人が被相続人の債務があることなどについて十分な調査をしなかったことにはやむを得ない事情があったというべきであり、相続財産がないと考えていたことについて相当な理由があったものというべきであるから、上記照会文書の受領時から民法915条1項本文の熟慮期間が進行する」としています。
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婚姻中の妻が他の男性と不倫し、不倫相手との間で子供をもうけた場合、当該子は嫡出推定の規定により当該子は夫の子と推定され、これを否認するには親子関係不存在確認の訴えによることはできず、嫡出否認の訴えによることが必要です。
しかし、嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から1年間しか提起できませんから、期間経過後に夫が父子関係を否認する手段は原則としてありません。
そうすると、不倫相手との子と夫とは法律上は親子関係があるということになります。
では、当該夫婦が離婚し、親権者である元妻が元夫に対して当該子の監護費用の分担を請求した場合、夫はこれに応じる義務があるのでしょうか。
確かに、法律上の父子関係があることや、子の福祉の観点からは、夫は監護費用の分担の求めに応じるべきとも思われますが、判例(最高裁判所第二小法廷 平成21年(受)第332号)は、以下のとおり判旨して監護費用分担の請求を退けました。
「前記事実関係によれば,被上告人は,上告人と婚姻関係にあったにもかかわらず,上告人以外の男性と性的関係を持ち,その結果,二男を出産したというのである。しかも,被上告人は,それから約2か月以内に二男と上告人との間に自然的血縁関係がないことを知ったにもかかわらず,そのことを上告人に告げず,上告人がこれを知ったのは二男の出産から約7年後のことであった。そのため,上告人は,二男につき,民法777条所定の出訴期間内に嫡出否認の訴えを提起することができず,そのことを知った後に提起した親子関係不存在確認の訴えは却下され,もはや上告人が二男との親子関係を否定する法的手段は残されていない。
他方,上告人は,被上告人に通帳等を預けてその口座から生活費を支出することを許容し,その後も,婚姻関係が破綻する前の約4年間,被上告人に対し月額150万円程度の相当に高額な生活費を交付することにより,二男を含む家族の生活費を負担しており,婚姻関係破綻後においても,上告人に対して,月額55万円を被上告人に支払うよう命ずる審判が確定している。このように,上告人はこれまでに二男の養育・監護のための費用を十分に分担してきており,上告人が二男との親子関係を否定することができなくなった上記の経緯に照らせば,上告人に離婚後も二男の監護費用を分担させることは,過大な負担を課するものというべきである。
さらに,被上告人は上告人との離婚に伴い,相当多額の財産分与を受けることになるのであって,離婚後の二男の監護費用を専ら被上告人において分担することができないような事情はうかがわれない。そうすると,上記の監護費用を専ら被上告人に分担させたとしても,子の福祉に反するとはいえない。
(2)以上の事情を総合考慮すると,被上告人が上告人に対し離婚後の二男の監護費用の分担を求めることは,監護費用の分担につき判断するに当たっては子の福祉に十分配慮すべきであることを考慮してもなお,権利の濫用に当たるというべきである。」
公正証書遺言であっても遺言能力を欠き無効とされることがあります。このことは以前もご説明したとおりですが、比較的最近の裁判例でも同様の問題が争われ、公正証書遺言が遺言能力を欠く無効であると判断されています(高知地方裁判所平成21年(ワ)第589号)。
判旨の概要は、以下のとおりです。
ア I医師は,平成17年9月9日,亡A1には財産を管理する能力がないとの鑑定意見を作成しているが,この鑑定が,それまで半年以上の長期間にわたり亡A1の診察に当たってきた医師によるものであることなどを考慮すると,その鑑定結果には高度の信用性が認められ、そうすると,亡A1は,遅くとも平成17年9月14日には,事理を弁識する能力に欠け,財産を管理することができない常況にあったと認められるから,このような状況下で同年10月12日に作成された本件公正証書遺言については,その当時亡A1が事理を弁識する能力を一時回復していたことが具体的に示されない限り,遺言能力がないために無効となるというべきである(民法973条参照)。
イ そのような見地から本件公正証書遺言が作成された状況を検討すると,まず,亡A1の遺言は公証人により作成されているが,公証人が遺言の作成に関与したということだけでは,遺言者に遺言能力があったはずであるとはいえない(同条参照)。
また,本件公正証書遺言の内容自体は,全財産を被告Y1に遺贈するという,単純なものであるが,そのような内容の遺言をする意思を形成する過程では,遺産を構成する個々の財産やその財産的価値を認識し,受遺者である被告Y1だけでなく,その他の身近な人たちとの従前の関係を理解し,財産を遺贈するということの意味を理解する必要があるのであって,その思考過程は決して単純なものとはいえない。
ウ そうすると,本件公正証書遺言の作成当時,亡A1には遺言能力がなかったと認められる。
本判決では、かかりつけ医の鑑定意見がほぼ決定的といってもいいでしょうが、鑑定医の意見がない場合等には実際問題として公正証書遺言の遺言能力を争うことは難しいかもしれません。ただ、紛争を未然に防ぐという遺言制度の趣旨からは、公正証書遺言の場合であっても遺言能力があることをしっかりと証拠化しておくべきと思われます。
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満15歳未満の者が作成した遺言書(民法第961条)?C精神障害などで判断力がない者の遺言書(民法第963条)代理人による遺言書は遺言能力を欠くため無効となります。
もっとも、被保佐人、被補助人は原則として遺言能力があると認められていますので、原則として単独で遺言書を作成することが出来ます。
さらに、成年被後見人であっても、判断力があると認められている場合は(一時的に判断能力が回復している場合)、医師2人以上の立会いのもと、一定の方式に従うことで遺言することが可能となっており、その後に判断能力を欠く状態になったとしても遺言の効力には影響はありません(民法第973条)。
大阪では毎日のように発生している交通事故ですが、警察庁の「平成24年中の交通事故死者数について」によると、2012(平成24)年の交通事故死者数は4?C411人(前年比は-201人、-4.4%)、交通事故発生件数も66万4?C907件と7年連続して減少し、負傷者は約82.5万人、となっているようです。
その背景には、飲酒運転による事故が減少したことがあるのかもしれませんね。
ただ、全体的に減少傾向にある死亡事故ですが、65歳以上の高齢者の事故においては重傷となったり死亡する割合が高いのが現状です。
年齢層別でみた場合、高齢者の交通事故による重傷者は30%以上をを占め、死者となると約50%と全体の半数近くにもおよびます。
運転免許保有者が高齢化し相対的に高齢者が増えたこともありますが、高齢者の事故は10年前の1.33倍にもなり、75歳以上になると2.00倍にも増えています。
今後は、高齢者の運転免許更新をどのようにすべきか、真剣に考える必要があるでしょう。
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